所謂「三位一体の改革」をめぐって、また、「大阪新都vs大阪特別市」等、分権の受け皿に関する議論が熱を帯びている現在、編者の一人、西尾勝先生が言われるように、「いま新段階に立つ日本の自治体は、いかなる改革の展望を持つべきか。」「自治体がこの新課題に取り組むには、既成理論を再編するとともに、新しい政策・制度づくりに熟達することが必要となる。」
この欄で取り上げるには大分すぎることもあり、躊躇していたが、大阪府が二重の意味で存亡の危機にあるとき、府庁に関わりのある人、また大阪の将来を考える人には、項目(アジェンダ)とその優先順位を整理する意味から是非ともご一読いただきたいと思い、取り上げることにした。
全5巻の構成は、1.課題、2.制度、3.政策、4.機構、5.自治、となっており、殆どの「新課題」が網羅されている。
1「.課題」所収「分権化と国際化」(森田朗)は、「分権化の必然性と『受け皿』」、また「補完性の原理」の章で、分権の受け皿という意味における、これからの自治体の課題を明確に提起してくれている。
2.「制度」で取り上げられている「課税自主権と財源の分権化」(神野直彦)では、例えば、シャウプ勧告がシャウプ税制になる過程で都道府県税の基幹税である法人2税が独立税とならなかった経緯を説明する中で、地方から見たありうべき税制改革を、部分的であるにせよ、的確に指摘している。
また、3.「政策」所収「地域づくり政策の再編」(保母武彦)では、「大阪湾の重化学コンビナートに見られる素材生産型製造業の誘致は(中略)経済開発効果をもたらさなかった」と断じた上で、「内発的発展」というキーコンセプトを対置させ、新しい地域づくりを提唱している。
以上3論文が同講座中の白眉であろう。