政務調査活動

【財政再建】

昨年末から今年の3月までに行った府の財政再建についての調査研究報告です。

再建のシナリオ⑮

再建のシナリオについて財政当局と議論する度に指摘するのは、ストックベースでの財政指標を作成し、それを地方債の発行管理に生かす方法開発の必要性である。例えば、起債残高を類似府県なみにするには約1兆1500億円の削減が必要であるが、その削減計画を示す 。あるいは府債残を府税収入の3倍程度即ち約4兆円以内に抑える計画を示す等。

ところが当局は実質公債費比率というフロー中心の財政指標のみに固執しようとする。この指標は地方債協議制移行に伴い導入された指標なので気持ちはよくわかる。

ここで紹介しておきたいのは、小西砂千夫教授が地方債の発行管理に関し基本的なアイデアとして提案されている、①1年間の現金収支が担保されていること②長期的な財政収支に持続可能性があること、(「地方財政改革の政治学」)という観点に立つ財政分析の必要性である。まさに我が意を得たり。というのも、現在、この2つの観点に係るデータ作成を財政当局に依頼しているからである。

財政的手段として、毎年の起債の上限が設定できるようになれば、毎年の収支改善目標が明確になる。

 

再建のシナリオ⑭

これまで、収支改善とは言え、収入は殆んど改善されないだろうという判断から支出の削減を中心に考えてきた。確かに、単年度のフロー面から言うとその通りであろう。しかしながら、バランスシートの改善という観点から考えると収入増も考えられない訳ではない。財務リストラはどの程度可能なのか考えておく必要がある。

大阪府普通会計バランスシート(平成19年11月)によると、大阪府の資産総額(行政サービスを提供するために用いられる資源)は約6兆8427億円負債(資産を獲得するために調達した財源のうち将来確実に弁済を要するもの)総額は約5兆2487億円正味資産(資産を獲得するために調達した財源のうち将来弁済を要しないもの)が約1兆5941億円となっている。

ストックを使ってフロー面を改善するというと、先ず、資産の内、有形固定資産(土地が約2兆3834億円、建物が約3兆3589億円)を処分する、ということになるだろう。実際、知事もハコモノといわれるものの必要性を実地見聞していただいている。しかし、資産は有形固定資産だけではない。投資及び出資金が約5214億円、貸付金が約2890億円もある。さらには、府税の未収金が何と351億円、その他未収金と合わせると約490億円もの未収金があるのだ。この中に「埋蔵金」がない訳ではないだろう。

再建のシナリオ⑬

資金繰りで減債基金からの借入は行わない。借換え債の増発(先送り)はしない。将来世代への負担の先送りはしない。以上3点を大前提とする財政再建のシナリオは以下の通りになるだろう。

1.将来世代へ負担の先送りはしない

平成19年度の府債引受機関への元金償還、利子支払額は6205億円であった。府民一人当たり約7万円になる。平成18年度は7306億円、一人当たり8.3万円。これが、例えば30年後に一人当たり15万円になるとすれば負担の先送りということになる。しかし、負担額が3万円~4万円になるようにすれば、これからの30年でわれわれの世代が泥をかぶったと判断できる。30年後から毎年2600億円
~3500億円の元利払いになるように、府債残高を減らす(例えば30年で3兆円減らして平成6年、7年並みにするなら1年で1000億円の減額が必要)。

2.借換え債の増発中止

  府債の償還、利払いを行っている公債管理特別会計の原資は、①減債基金の取崩し、②借換え債収入、③一般会計からの繰入金(公債費)、であり、毎年の基金残高、借換え債収入、は計算できるから、一般会計からの繰入金(公債費)も計算できる。

3.起債(原則起債あり、というところが知事との相違点)

府債残高の削減計画(何年間でどこまで減らすか)と毎年の公債費がわかれば、府債の新規発行上限額が設定できるようになる。

4.予算規模

府債の新規発行上限額がわかれば長期財政収支計画と平成20年度の歳出・歳入予算を明らかにできる。

5.歳出削減

 歳出・歳入を決定できれば要収支改善額(正確には削減額か)が決まる。

再建のシナリオ⑫

経常収支比率とは、府税等の経常的な一般財源が、人件費、公債費等の経常的経費に充当される割合であり、財政構造の弾力性を判断する指標とされる。もう少し詳しく言うと、経常的一般財源は府税の他、地方交付税、地方譲与税等、使用料、手数料、財産収入等のうち経常的に収入され、自由に使用できる財源である。

一方、経常的経費は、人件費、公債費、扶助費、物件費、維持補修費のうち臨時的性格の強いものを除いた経費を指す。

平成17年度(本会議)と平成18年度(委員会)に質問したとき、平成19年度から毎年500億円の収支改善を行ったとき、
経常収支比率がどのように推移するか財政課に試算してもらったことがある。結果は下表の通りである。 

 

平成19年度

平成20年度

平成21年度

平成22年度

計画ベース

103.7

102.0

100.3

98.9

起債事業で500億円

103.5

101.2

99.4

97.4

経常財源で500億円

99.9

98.2

96.6

95.1

税収増等で500億円

99.8

98.1

96.4

95.0

また、当時の試算によると経常収支比率を1%改善するためには135億円経常一般財源を増やすか、或いは、136億円経常経費を削減するか、のいずれかであった。この試算がなお妥当なものとすれば、1100億円の削減は約8~9パーセント経常経費を削減することを意味する。

再建のシナリオ⑪

議会は4会派の代表質問を終え、10日から一般質問、さらには委員会へと質疑の場を移す。これまでの知事答弁で繰り返されているのは、以前に書いた4原則、①減債基金からの借入を停止する、②借換え債の増発(返済の先送り)も中止する、③全ての事業、出資法人、公の施設の必要性を6月までにゼロベースで見直す、④平成20年度予算から「収入の範囲内で予算を組む」という原則を徹底する、に加え⑤起債は原則として認めない、⑥負担の先送りをしない、と要約できるだろう。

これも繰り返しになるが①~③は我が会派のこれまでの主張通りで異論はない。というより、知事はよくそこまで決断されたと思う。問題は、「収入の範囲内」という表現における収入の意味と、「負担の先送り」の解釈である。

収入に関し、結論から言えば、「起債は認めない」を原則としてしまったら再建のシナリオは書けない。確かに府債残高は類似県に比べ約1兆2千億円多く、削減する必要があるのは事実である。しかしながら、世代間の公平というなら、常に一定の額が返済され、常に一定水準の起債残高があるのがむしろ自然ではないだろうか。もちろん、実質公債費比率が危険水域に達しないことが当然の前提とはなるのだが。

したがって、実質公債費比率という指標以外に、例えば、①減債基金残高が常に満期償還額を上回っていること、②プライマリーバランスの黒字(新規発行額が償還額を下回ること)、③類似県なみの府債残高(例えば税収の約3倍程度)、等の指標を導入したうえで起債計画を策定すべきであると考える。

追加の取組み額6500億円については、実質公債費比率だけが指標として掲げられているが、経常収支比率も使って考えてみる必要があるだろう。

再建のシナリオ⑩

財政再建の目標は、何時までにどれだけの取り組み(収支改善)を行うか明らかにした上で(中期計画)、当該年度の取り組みを明らかにすることであろう。

中期計画を立てる際のマクロの前提条件は、①利子率と成長率(地方財政は国とは異なり、成長率がストレートには税収増等には結びつかないのだが)、②一般財源を充当して行う事業の公共性の高さ、③どの世代が(知事の言葉を借りると)泥をかぶるか、の3点であると考えられる。

利子率が高く、成長率が低いときは、府債の資金コストが割高になるから、起債は抑制し、府債残もできるだけ低位に下げるのが望ましい(現在は利子率のほうが成長率よりもやや高いと考えられる)。また、(目下、知事直轄のPTも作業を進めているようであるが)事業にあまり高い公共性(府の関与する必要性)がなければ、公債費(借金の返済)を少なくする必要性はなくなる。さらに、現世代が泥をかぶるのであれば、財政再建の目標は急なものとならざるをえない。

しかし、いずれにせよ、「起債は認めない」を原則としてしまったら再建のシナリオは書けない。

再建のシナリオ⑨

大阪府財政というミクロの観点から財政再建の問題を考えてきた。府が昨日公表した平成33年度(2021年度)までの財政収支推計も同様にミクロの観点から試算されている。新聞紙面を賑わせているのも「6500億円の削減」という見出しである。

確かに私たちは一般財源の収支不足を減債基金から借入れるという手法のおかしさを追及してきた。しかしながら、このことは歳入において府債の発行を認めないことを意味しない。

非常に単純化して考えると、政府の予算制約式は

歳入=歳出

税収等+公債発行収入=一般歳出+公債費     

基礎的財政収支=税収等-一般歳出=公債費-公債発行収入     

となるから新規発行が公債費(返済額)より少なければプライマリーバランス(基礎的財政収支)は発散せず、財政は持続可能であると判断される。

もっと詳しく言うと以下の通り(「地方債改革の経済学」(土井丈朗著))である。

歳入総額-歳出総額-翌年度に繰り越すべき財源=実質収支

税収等+地方債+積立金取崩し+繰越金=一般歳出+公債費+積立金+前年度繰り入れ充用金+翌年度に繰り越すべき財源+実質収支     

鳥瞰されなければならないのは、国の予算と並行して策定される地方財政計画と地方債計画である。ここで地方債は財源補償の手段として組み込まれている
のだ。

債務償還能力に応じて起債を行う。「起債は認めない」を原則とするよりは、どこまで起債を認めるか、という政治判断をもって予算規模を決定すべきであろう

再建のシナリオ⑧

大阪府の「赤字隠し」が報じられのと前後して、昨年末から府の財政再建の道筋を考えるために、「地方債改革の経済学」(土井丈朗著、日本経済新聞社)、「地方財政改革の政治経済学」(小西砂千夫著、有斐閣)、「地方債投資ハンドブック」(江夏あかね著、財経詳報社)、「地方財政システム論」(諸富徹・門野圭司著、有斐閣ブックス)、「分権時代の地方財政」(貝塚啓明編著、中央経済社)等を熟読したが、多くが、知事の言う「机上の空論者」の筆になるもので、例えば、夕張市の財政課長、或いは北海道庁地方課長自らの破綻分析が待望される所以である。

しかしながら、直ちに取り入れられるべき考えも少なくない。例えば、財政指標の改善に関し、「1年間の現金収支が担保されていること」と「長期的な財政収支に持続可能性があること」(小西)。[大阪府の問題は、1年間の現金収支を担保するために、長期的な財政収支の持続可能性を不透明なものにした、ということである(減債基金からの借入と借換え債の増発)]。また、地方債の発行管理に関し、「すべての長期債を10年債に置き換えたときの理論上の元利償還金を算定するなどの方法を取る」か「フローである元利償還金ではなくストックである地方債残高に着目した財政指標を開発する」(同)。

予算編成に関して、「最も重要なのは予算枠を総額としてどのように設定できるかであり、とりわけ、キーとなるのは、どこまで起債できるかの判断である」(小西)。

この他、「起債の規律付けを考える場合には、議会や住民の合意を得ることを、地方債管理の重要な要件として検討されるべきであろう」(諸富・門野)というのも有益な提案である。

再建のシナリオ⑦

平成20年度から借換え債の増発(返済の先送り)を停止しても資金繰りはつく。ただし、減債基金からの借入を止めるだけでなく、減債基金への返済まで直ちに開始するとなると影響は余りにも大きい。加えて、平成19年度の税収が見積もりより414億円下回ると予想されているし、平成21年度からは法人2税配分見直しの影響が出る。

減債基金からの借入を停止することと府税の減収に対応するだけで414億円+515億円=929億円の収支改善が必要になる。929億円の収支改善をした上で黒字化が要求されるから実際に1000億円の削減は誇張でもないだろう。(減債基金への返済、借換え債増発分の償還を同時に始めると2000億円の削減になる)

何度も書いているが平成19年度当初予算の構造は以下の通りである。

平成19年度当初予算額  3,255,548(百万円)

  このうち、一般財源は 
2,065,500(百万円)

(平成19年度内訳)

人件費               
7,926(億円)

公債費               
3,121(億円)

扶助費               
 196(億円)

税関連支出   
      4,501(億円)

建設事業費           
402(億円)

一般施策経費       4,509(億円)

(補助費)

              
医療費公費負担金   
723(億円)

                       
私学助成       
517(億円)

                       
介護保険       
640(億円)

                       
国保関係       
780(億円)等

     (物件費)

                  
教員委員会関係             

                  
公安委員会関係等

(維持補修費)

     (扶助費)等

赤字は裁量の余地なし

青字が削減の対象となる

青字部分1兆2837億円から1000億円を削減するということは一律7.79%のカットになる。

再建のシナリオ⑥

資金繰りについてはどうか。

減債基金からの借入で一般財源の不足を補うこと(資金繰り)ができても、これを続けるとやがて減債基金が枯渇してしまいその時点で赤字団体転落、というシナリオを回避するために始められたのが借換え債の増発(先送り)であった。

行財政改革プログラムでは平成20年度に870億円の借換え債増発を行い、減債基金取り崩し額を870億円減少させるとされていた。この870億円の借換え債増発を中止すると、公債管理特別会計の収入が870億円不足することになり、基金積立額も870億円減少することになる。さらに、収入不足を補うため減債基金からの取崩しが870億円増えることになる。他方、一般会計が減債基金からの借入719億円を停止するので、プログラムで予定されている減債基金残高は、2037+719-870-870=1016億円となる。以下平成20年度以降の基金残高を示す。

 

20年度

21年度

22年度

23年度

借入停止額

719億円

312億円

-38億円

-316億円

借入無基金残高

2756億円

2687億円

3141億円

4445億円

増発停止額

870億円

688億円

494億円

763億円

増発無基金残高

1886億円

1129億円

1089億円

1630億円

取崩増加額

870億円

682億円

482億円

751億円

基金残高

1016億円

447億円

607億円

879億円

この表を見る限り、資金繰りは、平成23年度まで、一般会計からの繰り出しをしなくても回っていく。

問題は、①平成16年度~平成19年度に行った借換え債増発分3500億円の償還を何時からどのように行っていくか
、②平成19年度まで一般会計が減債基金から借り入れた5514億円をいつからどのように返済するかである。
財政の健全化という観点からいえば、先ず①一般会計の累積赤字(減債基金からの借入累計)を解消する、そして、②先延ばした借換え債を償還する、ということになるだろう。しかし、減債基金への返済を20年度から始めるような計画を考えると、例えば、平成20年度から10年間、毎年
550億円づつ基金へ返済するとすれば、
平成20年度の一般会計で550億円の黒字を計上する必要が生じる。基金からの借入を停止することによる収支改善額515億円と合わせると1065億円の収支改善が必要となり、一般施策経費減への強い圧力となる。

再建のシナリオ⑤

昨日開かれた知事との意見交換会で明らかにされたのは、①減債基金からの借入を停止する、②借換え債の増発(返済の先送り)も中止する、③全ての事業、出資法人、公の施設のゼロベースでの見直し、④平成20年度予算から「収入の範囲内で予算を組む」という原則を徹底する、⑤新規事業は原則として計上せず、という内容であった。

この内容にしたがって平成20年度予算と資金繰りを想定してみる。先ず、①、②は資金フローに関する原則であるが、ストックと予算そのものにも制約を与える。①の影響については「再建のシナリオ①」で述べたように、平成20年度予算から減債基金の借入を停止すると、現計画で予定している2年間で1031億円(平成20年度719億円、平成21年度312億円)の収支改善(知事公約は新規事業に入れないということなので)、つまり1年間で515億円の収支改善が必要となる。歳入増が期待できないので、これは即515億円の歳出削減を意味し、この時点で予算規模が515億円縮小する。

平成19年度予算を例にとると、一般財源が2兆655億円。このうち裁量の余地のない公債費、税関連支出、扶助費がそれぞれ3121億円、4501億円、196億円、計7818億円であるから、残り1兆2837億円の内の515億円とすると約4.02%を、人件費(7926億円)、一般施策経費(4509億円)、建設事業費(402億円)から削減しなければならない計算になる。削減対象を人件費だけとすると6.50%一律カットということになるし、人件費には手を付けないということであれば、一般施策経費(4509億円)、建設事業費(402億円)から515億円削るということは10.49%カットという計算になる。

再建のシナリオ④

知事の借金(府債発行)をめぐる報道が賑やかである。一般論で言えば、毎年、政府の財源を税金等だけで賄うことには制約が大きい。個人であれ会社であれ、毎年、収入と支出の帳尻を合わせることが必ずしも最適とはいえないのと同様である。

ところで、借金には投資目的のものと消費目的のものがある。平成20年度に新規発行予定の府債のうち、例えば、通常債(一般公共事業債、公営住宅債、社会福祉施設整備事業債、学校教育施設等整備事業債等)2140億円は投資目的であり、世代間の公平を図る意味からも、むしろ望ましい借金といえる。他方、行革推進債(財政健全化債)と退職手当債、計400億円は消費目的であるが、将来に返済できるだけの税収等が望めるならば、これも必ずしも悪くない。

一番問題なのは一般財源の赤字である。これが黒字にならない限り、消費目的で借りた借金も返済の見込が立たない。だから、減債基金からの借入を直ちに停止するよう平成17年度以来主張し続けているのである。

再建のシナリオ③

新知事の予算編成方針が、伝えられるように、①減債基金からの借入を停止、(従って)②借換え債増発の停止、③後年度に交付税措置される起債は認め、た上で7月までの
暫定予算計上、とする。

シナリオ①でふれたように、平成20年度に減債基金からの借入をしないとすると、単年度収支は719億円の赤字になる(因みに、大阪府の標準財政規模は平成19年度で1兆4345億円。この5%、即ち、約717億円の赤字が準用再建団体への転落ラインになるから、719億円の赤字は即赤字団体転落を意味する)。

再び平成19年度予算を例にとると、一般財源が2兆655億円。このうち裁量の余地のない公債費、税関連支出、扶助費がそれぞれ3121億円、4501億円、196億円、計7818億円であるから、残り1兆2837億円の内の719億円とすると約5.6%を、人件費(7926億円)、一般施策経費(4509億円)、建設事業費(402億円)から削減しなければならない計算になる。削減対象を人件費だけとすると約9.1%一律カットということになる。

一般会計で予定されていた1700億円の起債も全て中止すると、一般財源が1兆8955億円に減る。裁量の余地のない7818億円を引くと残りは1兆1137億円。このうちの719億円は6.46%になる。

再建のシナリオ②

起債を認めないとどういうことになるのか、財政収支見通し(平成19年2月試算)に基づいて予測してみよう(一般財源ベース。ルールに従う借換えは認めるものとする)。

先ず、平成20年度に予定されている府債発行額は1700億円(全会計ベースでは2540億円)だから、これを認めないとすると歳入は見通し額の3兆1450億円から1700億円を減じた2兆9750億円になる。

他方、借換え債の増発が870億円予定されているが、これも認めないとすると歳出における公債費が3050億円から3920億円に増えるので(実際は増えないが増えると考えたほうがわかりやすいので仮にこう計算しておく)、歳出は3兆3320億円になる。

従って、歳入-歳出は▲3570億円、つまり3570億円の財源不足が生じることになる(財政収支見通しでは1000億円)。行財政計画における取組み効果281億円を勘定に入れても3289億円の赤字となり、歳出を削らない限り直ちに赤字団体となる。

前回は平成19年度予算の一般財源の状況から年間600億円の収支改善を行うとどのような事態が生じるか試算してみたが、3289億円の収支改善とするとどうなるか。一般財源が1兆8362億円。このうち裁量の余地のない公債費、税関連支出、扶助費がそれぞれ(3121+870=)3991億円、4501億円、196億円、計8688億円であるから、残りは9674億円。人件費(7926億円)、一般施策経費(4509億円)、建設事業費(402億円)の計1兆2837億円から削減しなければならない額は3163億円になる。人件費だけを対象にすると約40パーセント削減ということになる。

30%~40%の人件費
削減を職員労組は受け入れないだろう。そうすると、削減対象を一般施策経費、建設事業費に広げざるを得ない。

人件費(7926億円)、一般施策経費(4509億円)、建設事業費(402億円)の計1兆2837億円から3163億円を削減するとしても約24%の歳出削減になる。

一般施策経費の中には4医療費負担金723億円、私学助成517億円等の補助費等府民生活に直結する行政サービスが多数含まれる。これらをいきなり24%も削減できるのだろうか。

再建のシナリオ①

平成16年度以降、財政当局が何故いわゆる「赤字隠し」に走ったのか? 恐らくは財政危機の現状を公開しても対策が講じられていなければ市場の信頼が失墜し、起債の引き受け手さえ見つからない事態を懸念したのだろう。

平成17年度以来、我が会派は、持続可能で負担を先送りせず、且つ府民生活への影響を最小限に抑えるため、減債基金からの借入を停止し、身の丈に合った収支になるような府政の構造改革が必要であると主張し続けている(平成17年度の代表質問で私は500億円の収支改善を提案したが知事は聞く耳を持たなかった)。

仮に平成20年度予算から減債基金の借入を停止すると、現計画で予定している2年間で1031億円(平成20年度719億円、平成21年度312億円)の収支改善、(知事公約分をある程度反映させるならプラス約200億円)計、約1200億円、1年間で600億円の収支改善が必要となる。

平成19年度予算を例にとると、一般財源が2兆655億円。このうち裁量の余地のない公債費、税関連支出、扶助費がそれぞれ3121億円、4501億円、196億円、計7818億円であるから、残り1兆2837億円の内の600億円とすると約4.7%を、人件費(7926億円)、一般施策経費(4509億円)、建設事業費(402億円)から削減しなければならない計算になる。削減対象を人件費だけとすると7.6パーセント一律カットということになる。

新知事が主張するように、(いわゆる赤字隠しのための)借換え債の増発も、府債発行そのものも認めないとする。平成19年度予算では歳入が3兆2358億円、このうち府債が2293億円だから、歳入が3兆65億円に減少する。当然、この不足分2293億円は一般財源で補填する必要が生じるので一般財源も2兆655億円から1兆8362億円に縮小する。このうち7818億円を差引くと1兆544億円。600億円はこの5.7パーセントに該当する。

一般施策経費4509億円、建設事業費402億円に手を付けないとすると人件費は5633億円となる。これは19年度当初予算で計上されている7926億円の71パーセント、つまり29パーセントの削減ということになる。

財政再建の必要性

平成16年から「赤字隠し」という奇策で再建団体転落を防いだ、逆に言うと再建団体転落を防ぐためには「赤字隠し」、即ち借換え債の増発は止むを得ない手段であった、と財政当局は説明せざるを得ないのでしょう。

しかしながら、借換え(先送り)という手段の付けは、単に平成26年度以降の償還額を増大させるだけでなく、毎年の利払い額を増大させます。平成18年度を例にとりますと、府債残高(通常債)が4兆9929億円、利払いが917億円です。平成19年以降もほぼ同額と考えられます。平成26年以降は毎年1000億円近いお金が利払いになります(長期金利リスクがますます大きくなります)。これは府税収入、約1兆5000億円の6%に該当します。

元本の返済額が毎年約2000億円、さらに利払いがその半分の1000億円。つまり、毎年の税収の20%は借金の元利返済に費やされる。これが少なくとも10年間は続くのです。さらに、減債基金への返済が加わります。10年で返済するとして毎年600億円。総額3600億円が借金の返済に充てられるとすると、経常費充当一般財源の20%近くが公債費になると考えられます。

未来の崩壊

現行の行財政計画の先、つまり平成24年度以降の財政収支は見通せるのでしょうか。特に、平成16年度から始められた「赤字隠し」増発(返済先延ばし)分が満期償還を迎える平成26年以降が気になるところです。

平成24年度以降の財政収支見通しが平成23年度と比較して大きく違う点は、①平成14年度から大幅に増発された借換え債(平成14年度は平成13年度に比べ718億円増、平成15年度は平成14年度に比べ1154億円増)の満期償還を迎える、さらに、②平成26年度以降は、今回問題にしている「赤字隠し」の借換え増発(返済先延ばし)分の満期償還期に入るが、少なくとも臨時財政対策債等(平成16年から23年で854億円を増発、予定)プラスαは借換え増発時点で既に交付税措置されているので交付税は大幅減額になる。(つまり交付税の先食いをしている)

したがって、平成24年度以降は、公債費が増加するので歳出は3兆2000億円を下回らない額で推移する。他方、歳入は交付税(平成23年度で2350億円と試算されている)が大幅に減額になり、毎年、最大で1000億円程度の財源不足が生じることが推計されます。

この財源不足を何で補填するのでしょうか。

行財政改革という虚構の崩壊

行財政計画の「次世代の負担の抑制」という謳い文句が空々しく響きます。本来なら平成16年度から減少に転じていたはずの府債残高が実際に減少しはじめるのは7年先送りされ平成23年度からです。5461億円の「赤字隠し」を行わないと、平成23年度の全会計府債残高は4兆5469億円に減ります。

新知事が、この「赤字隠し」を直ちにやめることにすると、平成20年度に予定されている731億円の借換え増発分を再び減債基金から借り増しすることが必要になります(非常に短い期間に731億円の収支改善計画を作成せよ、と言っても現実的ではない)。

これで減債基金の活用可能残高は1757億円から1026億円に減じます。同様に平成21年度に予定されている622億円の借換え増発も減債基金からの借り増しに頼るとすると同年の減債基金活用残高は406億円、さらに平成22年、23年度の借換え増発367億円、484億を減債基金に頼ると、平成23年度に単年度黒字化どころか、平成23年度で府は赤字団体に転落してしまいます。

ガバナンスの崩壊

知事が「赤字隠し」を任期満了直前まで知らなかったということは議会として看過できない重要な問題を孕んでいます。特に、「財政当局というプロに再建団体転落回避を命じたがその具体的な手法は知らなかった」という発言は知事のガバナンス放棄ともとれますし、「私(知事)が知らなかったということについては注意喚起してもらいたかった。しかし、そのことをもってして誰かに大きな責任があるということではなく、一丸となって準用再建団体回避の道を探ってきた結果であると思う」という発言には、完全に府民も議会も不在です。

説明が足りなかったで済まされる話ではありません。何故ならば、財政を処理する権限は議決に基づいて行使する、という「財政民主主義」(財政のシビリアンコントロール)が踏み躙られているからです。提案している知事自身が予算の中身も知らないのでは笑い話にもなりません。府民の意思によるチェックとコントロールがききません。まさしく官僚独裁です。予算担当の総務部長、副知事は責任なしでは済まされないでしょう。

財政民主主義②

平成19年末に「6315億円の赤字隠し」が発覚するまで、議会には(IR資料でも)、平成8年以降、大阪府は全国で最も厳しい行財政改革(職員数の削減、給与抑制、事業の見直し等)を行った結果、①平成22年度に単年度黒字化を達成、②平成23年度から府債残高が減少に転じる、③平成22年度から減債基金からの借入残高も減少に転じる、という説明がされていました。

ところが、平成20年1月8日の知事記者会見によると、知事が「赤字隠し」を知ったのは平成19年12月であると告白しています。平成16年、つまり知事2期目の初年度から始められたこの「赤字隠し」のインチキを、予算編成権者であり、議会への提案者である知事が、任期最後の年の予算編成に至るまで知らなかった、新聞で報道されるまで知らなかった、ということは驚くべきことです。

この事実が投げかける問題は少なくないと思います。直ちに、①財政民主主義の蹂躙、②平成20年度予算が、この赤字隠し(借換え増発)731億円を含むものである場合、議会はこれを認めるのか、③新知事が方針を変更する場合、予算を組む時間的余裕はあるのか、ということが思い浮かびます。また、④平成22年度から減債基金からの借入なしに、行政サービスを削ることなく、未来への投資も含めた予算が組めるのか、⑤平成14年度から15年度にかけて倍々に増額された借換債、また
「赤字隠し」が始められた平成16年度からの増発発行分が、平成24年度或いは平成26年度から一般施策経費減への圧力とならないか、という点も気になるところです。

財政構造改革の必要性

府政の財政構造改革の必要性について最も集中的に質問したのは平成17年9月議会の代表質問でした。概略(時間のある方は質疑録をご覧下さい)を記しますと、①行財政計画は、平成19年危機をマネーフローの面から回避しているにすぎない、②府債残等のストック面からの改善に取組んで初めて財政の構造改革といえる、③禁じ手である減債基金からの借入れを10年も続けることは異常、したがって④減債基金からの借り入れを停止し、次いで通常債の起債残高を減少に転じさせるべし、⑤この方針で平成19年度から予算を組むためには毎年約500億円の収支改善が必要、という提言までしました。

あの時、知事が「蛮勇を奮ってでも500億円の収支改善をやる。そうしなければ「赤字隠し」と(昨今)いわれる手法をとらざるを得ない」というような答弁をされていたなら私の知事評価はコペルニクス的転回を遂げていたことでしょう。

今回言われている「赤字隠し」額6315億円、減債基金借入れ累計6436億円、府債残高5兆900億円を残して知事は府庁を去ります。10年で累積赤字を解消しようとするだけで毎年640億円の収支改善が必要になります。新知事には余りにも過酷な置き土産ではないでしょうか。議会にとっても非常に難しい宿題になります。

財政民主主義②

昨日から朝日新聞が「大阪府の赤字隠し、計3500億円に」という見出しで大きく報じている件について、片山・前鳥取県知事が「この問題を知事が知らなかったというのはあり得ないし、知らなかったとすれば管理能力を問われる。チェックすべき議会も機能せず、国も手を打たなかった」(31日付け朝日新聞朝刊)とコメントされているのをはじめ、多数の方から「議会は何をしている」という叱責のメール等を頂戴したので、会派(議会)の立場を簡単にご説明させていただきたい。

平成13年、大阪府が借金返済のために積み立てている減債基金から毎年度200億円から1000億円の借入れを前提とした「大阪府行財政計画」を策定し
たときから、我が党は「財政規律を回復」させるため、収入に見合った支出となる「府政の構造改革」が必要であると事あるごとに主張し続けてきた。

そういう見解に立って、平成18年の9月議会・総務委員会においても、私は「府債残高の削減計画」と「減債基金の返済計画」を中心に質問を行っている。その時に請求した資料によると、平成18年度の府債満期償還額は6563億円、この内、借換え債の額が4287億円、したがって差額の2276億円が平成18年度の返済額とされてい
た。

ところが、朝日新聞によると平成16年度から平成18年度の3年間を見ても、返済された府債額は僅か1306億円にすぎ
ず、平成18年度に返済すると私に説明された額2276億円をも下回るのである。

府債残高も、平成22年度でピークアウトするという知事答弁もウソであることが判明した。平成16年度からこういうインチキを始めていながら、平成18年に私が質問した際にも虚偽資料で平然と説明する。
確かに議会は機能しているのに議会の信頼を失墜させる。こういう役人が何故罪に問われないのか。

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