本稿を書いている最中(平成14年8月30日)、長野県知事選が全国的な関心を集めている。(この選挙に関しては、松室猛議員が問題点を的確に分析、解説されているのでそちらをご覧頂きたい。)
本書を取上げたのは、この知事選、或は選挙までの経緯を通して投げかれられた一般的な疑問、例えば「真の代表とは誰か?」、「党、党派性とは何か?」、「何故有権者が政治家は嘘つきだと考えるようになるのか?」等に対し、菊池寛の小説「入れ札」とそれが書かれた時代背景を分析することにより、また、古代アテネの民主制と現代のそれを比較することにより、明快な解答を与えているからである(第3章「入れ札と籤引き」)。
孫引きになるが、ケルゼンの「官僚支配にこそ民主制の最大の危険がある。そして一切の官僚制は必然的に専制支配に赴く」というような主張に対し、お役人はどのように反論されるのか聞いてみたいものである。但し、著者の「議会とは、実質的に、官僚が立案したことを、国民が自分で決めたかのように思い込ませるための手の込んだ手続きであると言えないでしょうか」という揶揄に対しては即否と言える。いわゆる 大阪府の銀行税条例を提案したのは自民党議員団であって知事部局ではないからである。